つれづれ本の旅 ☆ スゴい人はスゴい言葉を持っている…永山先生もそうです。
2023.2.25 Readingguide08-egaumaiyori
☆ 風景画像は京都 雪の大原です
・お題は…
絵が上手いより大事なこと
永山裕子 著 芸術出版社
描くことにまつわるさまざまな問いに、永山裕子先生はどのようにお考えなのでしょうか…
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絵にまつわる多くの問い
- 絵を描くとき大事な心構えは?
- 絵画教室に通うメリットは?
- 絵の枚数をたくさん描くことは大切ですか?
- 絵の完成度は時間と関係ありますか?
- 人物クロッキーをやる目的は?
- モデルとの対話は制作の役に立ちますか?
- よい構図とはどのようなものですか?
- 画家にとって技法だけでは超えられない壁とは?
- あなたの最終目標は?
/永山裕子 著 絵が上手いより大事なこと
…などなど、どれも気になる質問ばかり、これでも一部を抜粋、他にもたくさんの質問かがあって、永山裕子先生はその一つひとつに語るように応えます。
心構え
- 絵をかくとき大事な心構えは?
- 自分に嘘をつかないこと。
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
一度心が折れ、3年間描かずに引きこもってたワタシにとってこの言葉はズンと響きます。なんやカヤあって元気を取り戻した今だからこそ、この言葉をおろそかにしてはいけないと思えるのです。これだけが原因じゃないけど、ワタシの場合、制作をごまかしてきた末に描けなくなりました。
地面とつながる
床にあぐらをかいて座る。この地面とつながれる気がする。
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
絵を描くときの姿勢についてです。永山先生は外でもこのスタイルで描くそうです。腰痛持ちのワタシには地面にあぐらをかいて描くのは難しい…
ずーっと前に、学校の教室…机もイスも何もなく床がキレイに掃除されている教室のど真中で、大の字になって寝転んだことがあります。なんとも言えない開放感がありました。そういえば地面や芝生に座ったり寝転がったりすることが少なくなりました。そして子どもころはもっと大地に近かった…なんて思いました。
色と明暗と空気
色彩で表現する人明暗で表現する人…
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絵仲間のUmさんが、なんとなく花をうまく描く人には女性が多く、風景画の方が男性にうまい人が多く感じる…なんて言ってたことがありました。そう言われたらそうかもと思ってたらこの著書にあったカラーリスト、トーナリスつにつながりました。
カラーリスト、トーナリスト
色彩で表現するタイプがカラーリスト、明暗で表現するタイプがトーナリスト、そして女性は色を使うのを好む傾向があるそうです。
いろんな色をあつかえたら花を描くのにイイですよね。では明暗は?
明暗は立体感や空間、広がりを表現するのに必要です。風景を描くには特に遠近感は重要なファクター、風景画…それもモノトーンや明暗で描く男性が多く感じるのも、この傾向によるのかもしれません。
もちろんカラーリスト、トーナリストのどちらの表現力があった方がイイし、色と明暗を同時にあつかえる友人もいます。
などなど理論的なことも書かれてナルホドと思っていると、ちゃぶ台返しのように
本当はそんなことどうでもいい
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
もっと大切なことを語ろうとされています。
空気感
- 背景って何?
- こういう空気の中で存在させたい
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
この著書は、こう描けばイイのだよ…なんてわかりやすい技法書ではありません。描くことの道しるべ…とでもいいましょうか。
ワタシはその場の空気感をつかまえたい…そんな気持ちで風景を描いてます。じゃいったい目に見えない空気ってどう描けばイイのか難しくて答えも見えません。
ただ背景…風景の背景ってなんなのか、その定義もややこしいけど、空気感は背景にヒントがあるのではと感じてました。
著書では人物画や静物画の背景を語られています。ワタシは風景画にも通じると思いました。
クロッキーと現場制作
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永山先生が担当する美大のクロッキーゼミの話、モデルのポーズは生徒たちにリクエストさせているそうです。
ムービング
驚くのはそのほとんどが動いているポーズなのだ。
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
人物クロッキー、モデルさんがじっと動かずそのポーズを描くことがスタンダードです。そしてモデルが動き続ける姿を描く…ムービングというクロッキーもあります。もちろんムービングの方がハードルは高いです。描き慣れた人にとっても手強いです。それなのに学生さんたちがリクエストするのは動くポーズ、ムービングだそうです。
モデル、学生、それぞれが毎日新しいことに挑戦し、互角に表現し合っていた。
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
風景は動く?
写真の風景は動きませんが現実の風景は動きます。
光は時間や天候によって変わります。日差しが強ければ影は濃くコントラストが強くなります。曇れば影はあいまいになります。日が傾くとそれまで埋もれて見分けられなかったディティールが姿を表すこともあります。
無風の池は水鏡となって世界を映し出します。風が吹けば水面は波うち、世界は一瞬に消えます。
自然だけではありません。目の前に車が停車して視界を遮ることもあります。閉店時間になって、それまで飾られていた看板が撤収されることもあります。描いていた船が出港しました。干してあったカラフルな毛布が取り込まれました。
風景は刻々と変化するのです。その一瞬を捉えるのは難しく現場製作は手強いです。
もう一度、永山先生の言葉…
新しいことに挑戦し、互角に表現し合っていた。
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
現場で描く魅力は、ムービングに挑戦する学生さんの気持ちと重なる気がしました。
自分の絵
私は“水彩画“を描くのではなく、“自分の絵“を書いているんだー
永山裕子 /絵が上手いより大事なことより
帯びにあるこの言葉が印象深く、他にも取り上げたいコトはたくさんありますが〜
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映画や音楽、文学、絵画などの作品に出会うとき、年齢、心境によって受けとる印象、心の動きが違います。この著書も今のタイミングでないとポンコツ頭のワタシにはそれほど届かなかったのかもしれません。いや聡明なみなさんならスーッと入っていくのでしょうね。
解放
この本からワタシに何が届いたのでしょうか? 言葉で説明するのは難しいのですが、シンプルに言うと自由になれた…ってこと、うーん、自由になってイイんだ…の方が近いかなあ。
いろんな雑念を引きずって描くことがあります。かってな思い込みや周りの目を気にして自分を縛りつけているなにか、そういった様々なコトから解放される…自由に描けばイイ、自分の絵を描けばそれでイイ…これ永山先生がこの著書で伝えたかったことはコレかなとワタシは勝手に思っております。
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この本は、ワタシの紹介より何十倍も魅力的であることは間違いありません。
…おしまい