徒然スケッチ紀行★キャプション
2019.12.12 Takemesketch-3-unfogettablevisitor
・お題は…
ギャラリーさんを描く
野外スケッチで出会ったたくさんのギャラリーさん、その中で忘れられない人は?
2008年9月のこと、ずいぶん昔です。
この日のことは当時盛り上がっていたmixiに投稿しました。そこからの引用&再編であります。
休日のこと、鶴見緑地で、ある水彩画教室のスケッチ会があるという。
集合は昼の12時で一般参加できるのかどうかは不明、それなら午前中に一枚描いてからそのスケッチ会を見に行こう。参加できるなら参加したいなあ。
朝9時鶴見緑地入り、すでに大音量カラオケグループの方たちが演歌をうなっています。
大池超しに風車が見える風景は緑地の中でも好きな場所、以前にも描いたことあるけどここで一枚描こう。まずはおおよその見当付けて、F6スケッチブックに水を引き色を落とす(ファーストウォッシュ)。それを乾かす間にモノクロスケッチです。
このころファーストウォッシュを乾かす間にエスキース代わりの小さなモノクロスケッチをしてました。
この場所は人通りが多く、あるおばさんがやってきました。「こんにちは」ニコが先に声をかけます。
「おじょうずやね」とおばさん、
「ありがとうございます」
「これ、水彩って言うの?」
「こっちのを後で水彩で描きます」と色を落としたF6スケッチブックを指さし、
「今は墨で描いて練習です」と小さなモノクロスケッチを描き続けます。「いやあ、じょうずやねえ」
「いや、どうも・・・」「おいちゃん」
そのおばさんはワタシをおいちゃんと呼びます。「おいちゃん、悪いけど、それ描いてからでいいからお願いがあるの」
「???」「それ描いたら、私の絵を描いてくれない?」
えええ???、驚きました。
ワタシでいいのかな? ワタシの絵を気に入ってくださったのならガンバッテ描いちゃおうか? でも人物、まともに描いたことない…描けるかな?
一瞬、いろんなこと思ったけど引き受けました。
「おいちゃんなら断らないと思った」とそのおばさんは言います。おばさんにイスに座ってもらいSMサイズのスケッチブックに鉛筆で描き始めます。
「お話し、してて、絵が描けますか?」とおばさん、「大丈夫描けますよ、でもそのうち集中したら、黙ってしまうかも知れません」と応えるワタシ。
いろいろな話を聞かせてもらいました。絵はルノアールが好きだとか、あとピカソ、ロートレックとか、たくさんのな画家の名前が出てきます。
映画「男はつらいよ」に出演されていた俳優下絛 正巳にワタシは似ているそうです。
おばさんは、これまでいろいろ苦労を重ねてきて、今も父親の容態が悪く入院しているそうで、今日はそのお見舞いに行くとのこと。それでワタシが描いた絵を持って行こうと言うのです。
年甲斐もなくピンクのリボンを着けて来たけど、そのリボンも描いて欲しいと、そして今日、リボンを着けてきて良かったとその方は言います。
時間をかけて描くわけにいかないので、アタリをつける程度の下描き、そして着色、話をしながら描き続けます。そして…
「今の自分は、ここまでです」と、筆を置きました。
モデルを見ながら初めて水彩で描いた人物画は、プレゼントしたので手元にはありません。決して上手とは言えないけど、一生懸命描いた絵を、おばさんは手にして喜んでくれました。
「お父さんも喜んでくれるかなあ」おばさんは言います。ワタシも同じ思いです。
別れた後、大池の絵の続きを描き始めました。
mixi日記から再編
その後、この人とお会いすることはありませんでした。
…おしまい
水彩de 私をスケッチにつれてって